富山県にある立山連峰には、
アルペンルートで訪れる弥陀ヶ原や雄山とは違う、もうひとつの「
知られざる立山」があることを御存知でしょうか?
富山平野や
雨晴海岸から眺めることができる、あの雄大な稜線からは想像できない、牙を向け続けるもうひとつの立山。
その牙は、富山市の住民の命運を握り続けていると言っても過言ではない事実。
そして、その現場へは、工事関係者しか行けないのです。
それが、
立山カルデラ。
およそ100年間、ずっと砂防工事が行われているところです。
但し、立山カルデラに全く訪れることができない訳ではありません。
定数が決まっている体験見学会に申込み、高倍率の抽選に当選することによって、その荒々しい光景を見に行くことができます。
今回、2年越しの希望が叶うことができました。
昨年は、落選しまくりでしたからね…。
【早朝に福井を出発、立山町に到着です】
【大変良い天気に恵まれました】
もし、天候不順で見学会が中止になっても、振替日はありません。
改めて申し込んで、高倍率の抽選に再び当選しなければならないのです…。
一週間前から常に天気予報とにらめっこ。
当初は雨予報でドキドキの毎日でしたが、2日前の夕方から晴予報に転じてホッとしたものです。
【踏切を越えて、左側へ進むと…】
【富山地方鉄道立山線と立山黒部貫光立山ケーブルカーの、立山駅です】
【立山駅の前を過ぎて行くと…】
【立山カルデラ砂防体験見学会を主催する、
立山カルデラ砂防博物館に到着です!】
【博物館玄関前で、先に受付をします】
私が参加する体験見学会「
トロッコ個人コース」は、
バスで行ってトロッコで帰る1班と、
トロッコで行ってバスで帰る2班のどちらかを、申込みの時点で選択することができます。
博物館前に停車中のバスは、1班の参加者が乗るためのバスです。
私は、2班を選択していました。
【博物館内の決められた場所で、点呼まで待機します】
今回のトロッコ個人コースは、普段とは違ってAチームとBチームに分かれています。
申込み人数があまりにも多く、定員(1班と2班の合計で)40人では超高倍率になってしまうため、急遽倍の定員とし、解説員もそれぞれAチーム担当とBチーム担当に振り分けたのでした。
バスも普段は1台のみですが、今回はAチーム用とBチーム用の2台を用意したとのことです。
それでも5.5倍の倍率、本来の定員だったら11倍の超高倍率で、落選していたかも知れません…。
【点呼の後、ガイドブックと日程表・アンケートをいただきます】
点呼の際、記名捺印をした「参加者心得」を提出、服装は長袖長ズボンをと明示されているにも関わらず、「参加者心得」を持って来なかったり、短袖や短パンで参加してきたりしている人もいました。
しっかりと『当選通知』を読んできて、最低限のことは守って欲しいものです。
【まずは、博物館内で立山カルデラ砂防についての予習です。私は当選直後にあらかじめこっそりと博物館に訪れていたので、もうバッチリ!】
【博物館から出て、支給されたヘルメットをこの時点で装着します】
【Aチームが先発している間に、博物館玄関前にある
「護天涯」の碑(レプリカ)の説明です(「健脚多枝原コース」に参加すると、本物を訪れることができます)】
ちなみに、解説員お二人が帯同します。
Bチームの解説員は、ひとりは立山カルデラ砂防博物館設立に携わった中学校の理科の先生、もうひとりは「NPO法人 富山県砂防ボランティア協会」の方でした。
【トロッコこと、
立山砂防工事専用軌道の発着点がある
国土交通省北陸地方整備局立山砂防事務所へ】
【先発したAチームのトロッコが出発して行きました】
【国立公園内への外来種持ち込みを阻止するために靴を水洗いした後、トロッコに乗り込んで千寿ヶ原連絡所を出発!】
【3両の客車のうち、私はトロッコ解説員がいる最後尾の客車に乗車しました】
【前2両の様子は、こんな状況】
ちなみに、Aチームの参加者は19名(欠席者1名)、客車内をギュウギュウな状態で出発していきました。
しかし、Bチームの参加者は13名(欠席者7名)、とても余裕のある状態でトロッコ車両内で過ごすことができました。
何故、人数を揃えることができないかというと、、、国土交通省にAチーム参加者の名簿とBチーム参加者の名簿が送られていて、万が一のための保険などもその名簿を基に加入しているために変更はできないとのことです。
せっかく高倍率の申込み数から当選したにも関わらずキャンセルした人がいるのは残念ですが、おかげで大変快適なトロッコ車内となりました。
それでも、当然ながらエアコンなんてありませんから…。
【出発してすぐに、最初のスイッチバックがあります】
現在、トロッコ沿線には38ヶ所のスイッチバックがあります。
本当は、景観バッチリの川側に座りたかったんですが、、、お年を召した親子連れ2人組に
「川側に座らせて欲しい…」と言われて、譲ってしまいました…。
【スイッチバックを過ぎる度に、標高を上げていきます】
【立山駅に停車中の立山ケーブルカーが見えました】
【博物館の屋上にはヘリポートが設置されています。立山カルデラ内で緊急を要することがあったら、ここでヘリが到着できるようになっているのです】
【常願寺川の源流・湯川に沿って線路は伸びています】
【こんなトンネルもありました。運転員のおじさん、睨まないで~】
【あちこちで、絶えず工事をしています】
【山側にも、こんな巨石があったりします】
【大抵、スイッチバックは連続しています】
【使われなくなった、トロッコ旧線。この旧線の先に有名な「天鳥オーバーハング」が見えるのですが、、、山側からは見えませんでした…】
【桑谷に流れる滝の下を、滝見トンネルで通り抜けます】
【ギリギリのところを、トロッコはスイッチバックしながら先へ上へと進んで行きます】
【川面からも、少しずつ高いところを通って行きます】
【鬼ヶ城連絡所で、千寿ヶ原方面へ戻るトロッコ列車と交換です】
【立山カルデラの外でも、このように崩れている箇所が見受けられました】
【珍しく、ストレートな線路が伸びています】
【10年前に崩壊が始まった「平成の崩れ」。上の方に落ちそうな巨石が見えます】
【時折、こんな名も無き滝も見れました】
【トロッコ運転士が最も緊張して運転するという「グズ谷橋」付近。カーブ半径7m(!)という急カーブを通過するため、先頭のディーゼル機関車が見えてしまいます】
【立山カルデラから流れる湯川と、薬師岳を源流とする真川との合流地点です】
【世界一、高度差約200mを連続18段スイッチバックで上がって行きます。18段が始まる手前の樺平連絡所があっという間に下の方に見えます】
【スイッチバックの度に、ポイントが開く方向を示す信号が設置されています】
【トロッコ解説員(緑のヘルメットの人)の横にいるトロッコ運転員は、スイッチバックのポイントを過ぎたところを確認して、手に持っているブザーで運転士に知らせます】
運転員の役割としてもうひとつ、スイッチバックで後方に進んでいる際の安全確認もされていました。
トロッコを牽引するディーゼル機関車は何台かあるのですが、運転員の方が言うには
「一台一台、クセがあるので、常に気を張ります」とのことです。
何せ、レール幅が610mmしかないミニ鉄道、線路のすぐ横は絶壁か並木みたいなところが多いところを通っていく訳ですから、絶えず細心の注意をしながらの神経戦みたいな巡行になる訳ですから。
そのため、絶対にトロッコ車両から頭や手を出してはいけないとあらかじめ言われており、注意された参加者もいました…。
また、自然の落石だけでなく、カモシカが通った際に落ちてくる落石があったり、線路に引っかかって?落ちて死んでいる熊がいることもあるそうで…。
【通ってきたスイッチバックが山腹に見える度に、感動しきり】
【樺平連続18段スイッチバックの18段目が、トロッコ沿線の最後のスイッチバックでもあります】
【長い水谷トンネルを通り抜けると…】
【トロッコは一時停車、下車します】
【今回唯一、トロッコを牽引するディーゼル機関車を間近で拝見。運転席もサクッと拝見】
【途中下車したのは、体験見学会用に設置してある案内板から解説をするため。遠くに立山カルデラとその出口・白岩砂防堰堤が見渡せます!】
【解説の間、運転士&乗務員はしばしの休憩です】
【解説が終わり、トロッコに戻ります。機関車の名前が『
安政』だということを、ここで知りました。立山カルデラができた年号です…】
【工事関係者を追い越して行きます】
【プレハブの建物群が見えてくると、間もなく終点】
【千寿ヶ原連絡所から18㎞・標高差640mを1時間45分かけて、終点・水谷連絡所に到着しました!】
【私たちBチームが乗ってきたトロッコ列車は、引き込み線へ】
私が立山カルデラ砂防に興味を持ったキッカケが、このトロッコ(
立山砂防工事専用軌道)でした。
まずはひとつ目の目標を達成した訳ですが、楽しいとかそういう気持ちにはならなかったです。
何せ、工事のためだけの路線、あちこち保線をしている光景と、険しい自然環境を見ると、物見遊山な気分には到底なれなかったのです。
極端な意見ですが、、、トロッコだけを楽しんであとは興味無しって人には訪れて欲しくありませんね。
あくまでも、「仕事場見学」なんだという心構えが必要だと感じます。
【ここで、昼食タイムです。唯一、ヘルメットを脱いでも良い時間です】
【私の昼食は、北陸道・呉羽PAで購入した「
元祖 白えびの押寿司(610円)」。荷物にならないため選んだんだが、意外に美味しかったですね】
【国土交通省北陸地方整備局立山砂防事務所の水谷出張所と水谷寮です。立山砂防事務所の方々や工事関係者は、ここ水谷平の建物で寝泊りしています】
【寮の隣には、神社もありました】
【これが大事、手前の三角屋根の建物が、看護師常駐の療養所です】
何故、この水谷平にいわゆる「砂防工事の本拠地」を設置したかというと、、、最も立山カルデラに近い「
安全なカルデラ外」の場所だからとのことです。
【トイレを済ませて、チーム毎に集合・点呼です】
【ここからしばらくは、徒歩で移動。午後の部出発です!】
【立山カルデラ内に通じるトンネル。車も人も、トンネル信号に従います。元々はこのトンネルも立山砂防工事専用軌道の一部で、こういう形で再利用されています】
すなわち、関係者が車でもここまで来れるようになったため、このトンネルはトロッコ用ではなく車と人用になったということです。
【青信号になりました。人が歩いていることを示す、「赤色灯」を光らせてからトンネルに入って行きます】
【トンネル内は涼しくてヒンヤリ。しかし、蛍光灯が照らされているところとそうでないところの明暗がクッキリです】
【出口が見えてきました】
バス編に続きます。。。